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千葉地方裁判所 平成2年(わ)1250号 判決 1991年1月16日

本店所在地

千葉県市川市新井二丁目三番七号

株式会社オートガーデン

(右代表者代表取締役 渡邉登)

本籍

福島県安達郡岩代町茂原字福内一二五番地

住居

千葉県市川市本北方二丁目三七番五号

会社役員

渡邉登

昭和二九年四月一六日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官富岡淳出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社オートガーデンを罰金五〇〇〇万円に処する。

被告人渡邉登を懲役一年六月に処する。

被告人渡邉登に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社オートガーデン(以下「被告人会社」という)は、千葉県市川市新井二丁目三番七号に本店を置き、中古車販売業等を営むもの、被告人渡邉登(以下「被告人渡邉」という)は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人渡邉は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、仕入を架空計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和六〇年九月一日から同六一年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得額が三億七二一三万五四二五円であったのにかかわらず、同年一〇月三一日、同市北方一丁目一一番一〇号所在の所轄市川税務署において、同税務署長に対し、その所得額が七〇一〇万五九八九円でこれに対する法人税額が二九〇九万五七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一億五九八七万四七〇〇円と右申告税額との差額一億三〇七七万九〇〇〇円を免れ、

第二  同六一年九月一日から同六二年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得額が二億四〇四一万三二六六円であったのにかかわらず、同年一〇月三〇日、右市川税務署において、同税務署長に対し、その所得額が九一二八万九八〇九円でこれに対する法人税額が三七〇一万九六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額九九六五万一七〇〇円と右申告税額との差額六二六三万二一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人会社代表者である被告人渡邉の当公判廷における供述

一  被告人渡邉の検察官に対する供述調書四通

一  高橋弥文(二通)及び黒田誠の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料、売上高調査書、販売奨励金調査書、仕入高調査書、消耗品調査書、賃借料調査書、有価証券売買損調査書、事業税認定損調査書、期首商品棚卸高(その他所得)調査書、給料手当(その他所得)調査書及び雑収入(その他所得)調査書

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  千葉地方法務局市川支局登記官作成の登記簿謄本

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和六〇年九月一日から同六一年八月三一日までの期間に関するもの)

一  押収してある昭和六一年八月期の法人税確定申告書一冊(平成二年押第二七四号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和六一年九月一日から同六二年八月三一日までの期間に関するもの)

一  押収してある昭和六二年八月期の法人税確定申告書一冊(平成二年押第二七四号の2)

(法令の適用)

被告人会社及び被告人渡邉の判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法一五九条一項(被告人会社についてはさらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人渡邉については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内で、被告人渡邉については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人会社を罰金五〇〇〇万円に、被告人渡邉を懲役一年六月に各処し、被告人渡邉に対し、情状により同法二五情一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

(量刑の理由)

本件は、被告人会社の代表取締役である被告人渡邉が二事業年度にわたり、被告人会社の業務に関し合計一億九〇〇〇万円余の法人税を脱税したという事案である。

被告人渡邉は、昭和五四年二月、中古車の販売等を業務とする被告人会社を設立して代表取締役に就任し、現在に至るまで被告人会社を経営しているものであるが、昭和五七年末ころから個人で株式の取引を始めたところ、取引のあった証券会社の担当者が無断で株の売買をするなどしたため、多額の損失が生じ、右損失を取り戻すため被告人会社の資金を流用して、株式取引を継続したものの逆に損失が拡大し、その資金を被告人会社に返還することができないため、被告人会社の被告人渡邉に対する未精算の仮払金や貸付金が多額にのぼり、決算書類上右仮払金等を表面にださないようにするために、被告人会社の仕入を架空計上するなどの方法により、所得をごまかし法人税を脱税したものであり、証券会社側に不適切な行為があったため、被告人渡邉の株取引による損失が拡大したという事情はあるが、脱税が許容されるわけではなく、動機において酌むべき事情はなく、被告人渡邉は、経理担当者に指示して被告人会社の資金から多額の出金をさせたうえ、これらを期末に振替伝票によって仕入勘定に振り替えさせて仕入を架空計上していたものであり、ほ脱率は二事業年度を総計して約七四・五パーセントであり、脱税額も一億九〇〇〇万円余と巨額であって、本件犯行は悪質であるといわざるを得ない。

他方被告人会社は本件犯行発覚後、修正申告をし、賦課決定を受けていない分を除き、重加算税を含む税金を完納していること、現在では定期的に税理士の指導監督を受け、経理体制を改善し、誠実に納税義務を果たすべく、社内の体制の整備していること、被告人渡邉には傷害罪による罰金前科一犯以外には前科がないことなど、被告人らに有利に諸事情も認められるので、これら諸般の事情を考慮し、各被告人に対し主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 土屋哲夫)

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